骨粗鬆症(骨粗しょう症)について
※広報誌『にしよこさんぽ 2025年春号』特集より

骨の耐用年数をご存じですか
答えは、「健全であれば」半永久的です。人の体には骨を作る細胞(骨芽細胞)と骨を壊す細胞(破骨細胞)が存在し、常に骨の作り替え(骨代謝)を行い、強度を保っています。
私たちが暮らす建物の耐用年数は木材で22年、鉄骨で34年、鉄筋コンクリートでも47年といわれますが、カルシウムとタンパク質でできている人間の骨は、この骨代謝のおかげでリフォームなしで100年以上。実際、100歳で歩ける方もいますよね。
骨粗鬆症とは
骨代謝は常に万能ではありません。子どもの頃は、骨を作り替える力が強く、ホルモンの指令で背は伸び、骨折してもすぐに治ります。しかし、歳を経るにつれて、骨代謝のバランスは徐々に崩れ、弱い骨しか作れなくなってしまいます。このように、骨がもろ脆く、折れやすくなってしまった状態のことを「骨粗鬆症」といいます。

骨粗鬆症の恐ろしさ
骨粗鬆症自体に症状はありませんが、骨が脆くなっているため、転んだだけで骨折し、それまで元気だった方が寝たきりになってしまうことがあります。2022年度国民生活基礎調査によると、介護が必要になった主な原因の13.9%は、骨折・転倒によるもので、全体で3番目に多くなっています。重篤な場合、転倒などの衝撃がなくても、日常生活を送っている中で腰椎や股関節を骨折する「いつのまにか骨折」というものもあります。私は整形外科医として、そのような患者さんをたくさん診療してきました。
放置せずに治療を

ある患者さんは近所の整形外科で骨粗鬆症と診断されたものの、「症状もないし、ただの老化現象だろう」と考え、自己判断で通院を止め、本来治療が必要だった骨粗鬆症を放置していました。ある日、お孫さんの結婚式に出るために外出する際、玄関で転倒し、股関節を骨折。すぐに救急搬送され、結婚式に出席するどころか、そのまま緊急入院となり、手術を受けることとなりました。普段の運動不足もあり、リハビリをしても満足に歩けなくなってしまい、残念ながら一度も自宅に帰ることなく、施設に入所することになりました。その方は「ちょっと転んだだけなのにねえ」とよく話していました。
骨粗鬆症の患者数

日本には約1,590万人の骨粗鬆症患者がいるといわれ、おおよそ「8人に1人」というデータがあります。特に女性に多く、約1,180万人、80歳以上の女性に限れば2人に1人が骨粗鬆症と報告されています。糖尿病の人の数が約1,000万人といわれており、骨粗鬆症の患者さんは非常に多いことがわかります。
骨粗鬆症の種類
大きく3つの種類に分けられます。女性特有の「閉経後骨粗鬆症」、男女問わず高齢になると誰しもリスクのある「老年性骨粗鬆症」、そして「その他の骨粗鬆症」です。厳密にいうともう少し細かく、また、それぞれの要素が混ざり合うことが多いですが、おおよそこの3つで考えるとよいと思います。
閉経後骨粗鬆症
壮年以後の女性特有のホルモンバランスによるものです。女性ホルモンには「骨を壊す細胞を抑える効果」があります。しかし、閉経により女性ホルモンの働きが弱まると、骨を壊す作用が強くなり、骨の強度が下がってしまいます。骨粗鬆症が女性に多いのは、この閉経後骨粗鬆症が多いためです。そのため、閉経を迎えたら、定期的に骨密度検査を受けることをおすすめします。
老年性骨粗鬆症
歳を経ると骨代謝自体が低くなるため、主に骨を作る作用が弱くなり、骨の強度が下がってしまいます。性別にかかわらず、高齢になれば誰にでも起こりうることです。また、骨代謝の低下のほかに、身体にもともと備わっているカルシウムを体内に吸収する機能が、加齢により弱まってしまうことも一因といわれています。
その他の骨粗鬆症
ステロイド薬を常用している方や、内分泌(ホルモン)の病気がある方、低栄養状態の方、悪性腫瘍など、ほかの病気や薬の影響、栄養状態などによっても、骨粗鬆症になることがあります。その場合は、原因に対する対策が必要になります。
骨密度検査だけではない、骨粗鬆症の診断
骨粗鬆症の診断といえば、「骨密度検査」を連想する方が多いと思いますが、実は「骨折しただけで」診断されることもあります。丈夫な骨であれば、転んだだけで骨折することはありません。転んだだけで背骨や股関節の骨が折れた場合、それは治療が必要な骨粗鬆症と診断されます。重要なのは骨密度検査の結果だけではなく、骨の質も含めた「骨折のしやすさ(骨強度)」であり、それらを総合的に見て、骨粗鬆症と診断されます。
予防について
骨粗鬆症対策で重要なのは「予防から、早くから、まずは食事から」です。食事はすべての基本です。まずは骨の材料をしっかり摂りましょう。カルシウムだけでなく、タンパク質(魚、肉、乳製品など)やビタミンD(青魚、きのこ類)、ビタミンK(納豆、緑黄色野菜)を摂取し、適度な運動をしましょう。
運動は骨に適度なストレスを与え代謝を促し、 転ばない筋力の維持に有用です。骨で体重を支えるウォーキングや太極拳などが骨密度の維持や上昇に役立つことが分かっているほか、縄跳びも有効です。また日光を一日15分以上浴びることにより、皮膚からビタミンDの生成も期待できます。家庭でできる運動では片足立ち、かかと上げ、スクワットがおすすめです。運動能力は人によってさまざまなので、できる範囲で続けてください。
不安な場合は受診を
肋骨、骨盤、上腕骨(肩の骨)、橈骨(手首の骨)、下腿骨(膝から足の骨)が簡単に骨折してしまったことがある方や、ご両親に股関節の骨折歴がある方などは、骨粗鬆症と診断される可能性があります。ご自身やご家族が骨粗鬆症か心配な方は、整形外科に相談にいきましょう。
監修:金井 研三(かない けんぞう)
専門 脊椎・整形外科一般
資格 日本整形外科学会整形外科 専門医
参考資料:
1)ガイドライン|日本骨粗鬆症学会 Japan Osteoporosis Society (josteo.com)
2)統計局ホームページ/人口推計 (stat.go.jp)
3)Trends in osteoporosis prevalence over a 10-year period in Japan: the ROAD study 2005-2015 – PubMed
4)2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況
