脳卒中について知ろう!~FAST 覚えてほしい初期対応~
10月は「脳卒中月間」であることをご存じですか。厚生労働省によると、脳血管疾患は令和4年の死因第4位となっています。日本脳卒中協会の定める今年のテーマは「脳卒中 予防で伸ばす 健康寿命」。今回は、脳卒中の原因や予防について脳神経外科部長の串田剛医師に話を聞きました。
脳卒中とはどのような病気ですか?
卒中というのは卒然として中(あたる)という意味で、突然の悪い風にあたり体が動かなくなるさまを言います。卒中とは一種の発作です。脳卒中は脳血管障害の中でも突然起こる、一種の発作という意味が含まれています。さらにその後遺症が残った状態を日本では中風、中気と言ってきました。神社仏閣のお守りでも中風や中気除けの字を見たこともあるかと思います。英語ではStrokeといいます。一撃という意味です。
脳卒中には、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血があります。突然起こりあっという間に進行していく脳血管障害なので、後遺症を最小限に抑えるためには、迅速な救命措置が重要となります。
原因は何ですか?
脳卒中で過半数を占める脳梗塞の中で、アテローム血栓やラクナ梗塞と呼ばれるものは動脈硬化。一方で、心原性脳梗塞と呼ばれるものは不整脈などの心臓疾患が原因となります。
脳出血の場合は、高血圧やアミロイド血管炎が原因となります。
くも膜下出血の原因は脳動脈瘤です。
初期症状などありますか?
まずは、FASTを覚えてください。脳卒中の症状には片側の手足・顔半分の麻痺・しびれ(顔のみ、手のみ、足のみのこともあります)、ろれつが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない、ものが二つに見える、視野の半分が欠ける、力は入るのに立てない、歩けない、フラフラする、経験したことのない激しい頭痛、嘔気・嘔吐などがあります。
その中でも、顔面神経麻痺を疑わせる顔の歪み (Face)、運動麻痺で上肢の力が入らない (Arm)、ろれつが回らない・言葉が出ない・他人の言うことが理解できない (Speech) は代表的な症状です。ひとつでも「突然」このような症状が出たときは、脳卒中の疑いがあります。脳卒中が疑われる場合は、すぐに症状が現れた時刻(Time)を確認してください。それぞれの頭文字をつなげて FAST、ACT-FAST(アクト・ファスト)、急いで行動、つまりすぐに救急車を呼びましょう。この標語は多くの国で使われています。
意識がない場合、嘔吐して窒息する危険があるため、回復体位(体を横にむける)の体勢をとることも重要です。
- 仰向けから、横向きに寝かせます。
- 上側にきた方の手をあごから顔の下に入れます。(※右手を下にした場合、左手の甲に顔を乗せます。)
- 下あごを軽く前に出して、気道を確保し、息をしやすくします。
- 後ろに倒れないよう、上側の足を前に出して、膝を90度曲げておきます。(※右足を下にした場合、左足を曲げます。)
予防策はありますか?
動脈硬化が原因の脳卒中は、高血圧、糖尿病、脂質異常などを予防改善する生活習慣を身につけることが大切です。特定の健康食品だけ摂ればいいというものではなく、考え方あるいは生き方から変えなければ生活習慣は変わりません。例えば「孫と遊びに行きたい!」などささやかな願いの実現から始めると自然と健康に生きようという考えになるやもしれません。
最後に
脳卒中の予防をどうしたら良いか、再発の予防をどうしたら良いかなど、不安に思うことがあれば、脳神経外科にご相談ください。
また、良い目標を立てていると思考や感情が整い、自然と健康習慣が身に付くことと思います。脳卒中を予防し、充実した人生を送りましょう!
串田 剛(くしだ つよし)
〈専門〉
脳卒中、脳卒中リハビリテーション
〈資格〉
日本脳神経外科学会 専門医
平成元年に東邦大学医学部を卒業。平成20年まで大学病院と関連病院で急性期医療に従事、その後リハビリテーション病棟やクリニック、在宅医療などさまざまな医療現場で専門性を生かした医療を行う。令和6年7月当院脳神経外科部長に就任。