医療特集 特集インタビュー 理事長×院長

左/理事長 髙木 啓吾  右/院長 三瓶 建二
今年度は、法人理念を「安心・安全の医療」から「安心・安全の医療・介護」とし、それに伴い、基本方針も改定しました。改定の理由を教えてください。

髙木理事長(以下:髙木):「介護」への貢献について追加する形で改定しました。当院は開院して35年が経過しますが、その間、社会は高齢化が急激に進み、それに伴いさらに幅広い地域への医療の提供、介護への貢献が求められるようになりました。治療し支えていく医療と介護を提供する『面倒見のいい病院』でありたいという当院の方針を盛り込みました。

三瓶院長(以下:三瓶):今までの理念には介護の観点が抜けていたので、それを補う形で改定しました。当院は医療と介護は一体となって事業運営を進めてきましたので、それを前面に出したイメージです。

“面倒見のいい病院”とは具体的にどういうことでしょうか?

髙木:病気を治療するだけでなく、患者さんの声に耳を傾け、一人ひとりの心にアプローチする姿勢を持つことです。患者さんが抱える悩みや課題を一緒に解決していくことが、面倒見のいい病院の役割だと考えています。

“面倒見のいい病院”を目指して、どのような取り組みをしていますか?

髙木:今年は職員研修にコーチング研修を取り入れました。医療従事者同士、医療者と患者さんとの対話を通じて、問題解決のために最善の方針を模索する研修です。今年は2回行いました。来年も継続していく予定です。

6月に「にしよこ在宅クリニック」「にしよこ整形外科クリニック」(いずれも泉区下飯田町)開院という大きな動きもありました。開院して約半年が経過しますが、手ごたえはいかがですか?

三瓶:当院は戸塚区の南西部に位置しており、泉区にも非常に近い距離にありますが、知名度やアクセスの問題があり、泉区からの来院が少ないという現状がありました。新たなクリニックを泉区に開院し、クリニックと病院を往復するバスを運行したことで、問題は少し解消したかと思っています。両クリニックとも、院長、スタッフともに若々しく、精力的に活動しているので頼もしい限りです。

髙木:下飯田駅周辺は開発中で、これから町自体が若返って盛況になると思いますしね。

今年からSNSを始めたり、地域のイベントに参加したりと広報活動にも力を入れています。その経緯を教えてください。

髙木:以前から、当院が戸塚の中で埋もれてしまっている感覚がありました。自分たちが提供している医療や介護を胸張ってアピールできる場所が必要だと考えていましたが、片手間にやるには限界があったため、広報を専門とする部門を立ち上げました。自治体や地域に「にしよこはこんなことをやっています。どうぞ利用してください。」ということをアピールできるようになったので、大変感謝しています。
三瓶:うちの病院の知名度を上げることに加えて、地域密着型の病院というわかりにくいものを広報していくことも狙いのひとつです。従来の病院は、外来あるいは救急にかかり、必要があれば入院や手術、回復すれば退院という流れがあり、一般の方は病院とはそういうものだと思っています。ただ、当院はその流れとは少し違います。回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟、生活に即したリハビリや在宅医療、介護など、病院を出たあとの生活まで支える医療があることも知っていただきたいと思っています。

戸塚駅の東側と西側では当院の知名度も異なりますよね。

三瓶:国道一号線の存在と、かつてあった開かずの踏切の影響は大きいよね。地域が分断されちゃってたからね(笑) もともとうちの知名度は低かったけどね(笑)

今年は広報活動のほかに、社会貢献活動にも注力しました。それによる意識の変化や課題などはありましたか?

三瓶:横浜市のSDGs認証制度”Y-SDGs”の認証を受けました。病院は24時間365日医療機器を稼働しなければならず、省エネは考えにくい。また、毎日大量の点滴バックなどのプラスチック廃棄物を出しているのも事実です。これらは、病院だけでなく医療にかかわる企業全体で考えていかなくてはならない問題です。その手始めとして当院でY-SDGsを受けることで、問題提起したいと考えました。

社会の動きとして、新型コロナウイルス感染症が5類に移行しました。病院には何か影響はありましたか?

三瓶:5類になってもウイルスの本質が変わるわけではないので、感染防御という点では、従来の方法をとっていくしかありません。患者さんには窮屈な思いをさせてしまっており、スタッフにも相当な負担を強いていると思います。そんな中でも、患者さん、ご家族の皆さん、スタッフがとても協力的でありがたいです。感染を拡大させないためには、感染患者さんを隔離することがとくに重要です。そのため、病棟を十分に活用できないことが、病院運営の重しになっていることも事実です。とはいえ、幸いなことに患者さんもスタッフも重症化した方はいませんでした。それが1番ですね。
髙木:重症化する患者さんは少なくなっていますね。院内クラスターもこの4か月は発生していません。今後も引き続き、院内でのマスク着用など、対策を徹底していきます。

5類に移行したことで、社会の感染対策が緩んでいることもあるかと思います。先生方が重視する感染対策を教えてください。

三瓶:やはり手指衛生ですね。手指衛生は、とにかく徹底していく。従来からいわれていた感染対策をこれからも継続していくことが重要です。院内に持ち込まない、感染してもほかの人に移さないためには手指衛生がすごく大事になってきます。それから、病院内でのマスクの着用。院内のマスクはもうこれからずっとでしょうね。
髙木:建物が大きく広い病院と昔ながらの狭い病室しか持っていないところでは感染力が異なるんですよね。古い病院が喚起システムをきちんと作り直すという工夫も必要だと思います。当院の天井も高くはないので定期的に見直していくことが重要ですね。

当院は新型コロナウイルス感染症の診療では、発熱外来のほかに後遺症外来を行っています。後遺症外来は、具体的にどんな方が来るのでしょうか?

三瓶:他院でコロナ後遺症の診断を受けた方が対象です。コロナ罹患後1か月以内の方が多く、若い男性が多い印象です。症状は様々ですが、体力が低下し出勤するのが困難だが、なかなか診断書が出ないので困っている、というお声を多く聞きます。

新型コロナウイルス感染症など、病院運営には今後も課題があると思います。2024年の展望をお聞かせください。

三瓶:とにかく、働きやすい病院を作ることです。働きたいと思わない病院に患者さんは来ません。2019年の院長就任時からずっと、ハラスメント対策を徹底しています。今後も引き続き、力を入れていきたいと考えています。
髙木:『地域に開かれたにしよこ』を目指していきたいです。近隣の高度急性期病院や二次救急病院との連携により、最適な救急医療を提供し、当院の在宅医療センターや近隣の介護施設等との強固なネットワークで、治療後の生活をサポートする。当院はそのハブとしての機能を持ち、どんな患者さんでも断らない病院を目指します。
三瓶:経営陣は方針を定めるのは得意ですが、そのプロセスに穴があることがあります。スタッフはそのプロセスを点検し、間違いがあれば指摘していただきたい。風通しの良い組織にならなければいけないと考えています。
髙木:スタッフはもちろん、患者さんや近隣住民の声にも耳を傾けていきたいですね。率直な意見、希望を積極的に取り上げることで、よりよい病院を目指していきます。

昨年のインタビューでは、料理を始めてみるなど、おうち時間をエンジョイされていました。今年はどうでしょうか?

髙木:昨年は家で何をしようかと考えたときにふと、「うまいものを食べたい」と思い、料理を始めました。今は屋外の行動にある程度制限がなくなってきたので、30年以上の趣味である釣りに行っています。先日は東京湾の横須賀沖の走水に行きました。走水は水流が非常に激しく、釣れる魚も大物です。先日は、40㎝を超える大きなアジを釣りました。

ズバリ、釣りの魅力を教えてください。

髙木:うまいものが食べられることです(笑)

横須賀沖、走水(はしりみず)で40cm級の大アジ釣り。ウィルス感染なし、釣り醍醐味あり、アジ味よし、やめられません。
三瓶院長はいかがですか?

三瓶:引き続き、料理を楽しんでいます。『きのう何食べた?』という、食事をいろいろ作るドラマがあるのですが、素朴な素材や調味料を使っていて、ドラマを見ていると作りたくなるんですよね。この前もバターチキンカレーとチーズナンを作ってみたりして。普通の鶏肉を使って作ったのですが、我ながらおいしくできました。ナンもそんなに難しくないんですよ。

お手製のバターチキンカレーとチーズナン
お弁当は彩りも気にしてみたり