医療特集 いろいろなめまい ~世界がぐるぐる回ったら~

耳鼻咽喉科部長 河野 敏朗

 夏場にめまいを感じると、「暑さのせい」と考えがちですが、実は、めまいには他の病気が隠れていることがあります。耳鼻咽喉科部長の河野敏朗医師監修のもと、めまいに隠された病気について解説します。

めまいの種類

 めまいは主に、「浮動性めまい」と「回転性めまい」の大きく二種類に分けられます。
 浮動性めまいは、脳に原因があることが多く、ふらふらと浮遊感を感じることが特徴です。浮動性めまいに加え、手足のしびれ、呂律が回らない、意識がぼんやりするなどの症状があれば、一刻を争う可能性がありますので、早急に病院を受診してください。
 一方、回転性めまいは、意識ははっきりとしているものの、ぐるぐると目が回るような感覚になるのが特徴です。実は、この症状の多くは耳に原因があります。
 今回は、回転性めまいが発症する耳の病気について、詳しくお話します。

回転性めまい(イメージ)
回転性めまいに隠れた病気と治療法

①良性発作性頭位めまい症
 重力や体の方向を感知する「耳石器」の中にある耳石が剥がれ、三半規管の中に入り込むことで、回転性の激しいめまいがする病気です。寝返りをしたときや朝起きたときなど、決まった頭の位置でめまいを起こすことが特徴で、どの位置でめまいがするかは人によって様々です。耳石が剥がれる原因ははっきりとわかっていませんが、カルシウムの代謝障害やホルモンが関係していると考えられています。
 良性発作性頭位めまい症は、小型CCDカメラなどで耳石の位置を観察しながら患者さんの頭や体の位置を調整し、三半規管に入った耳石を耳石器に戻す、「浮遊耳石置換法」という治療を行います。良性発作性頭位めまい症のほとんどはこの治療法で治癒しますが、補助的に抗めまい薬や吐き気止めなどを処方することもあります。

 

②メニエール病
 回転性めまいが長時間続き、何度も繰り返す病気です。また、難聴や耳鳴り、耳の閉塞感を伴うことも特徴です。メニエール病は、内耳にある三半規管と蝸牛(かぎゅう)を満たす内リンパ液が増えすぎることが原因とされています。発症のメカニズムはまだ解明されていませんが、ストレスが関係していると推定されています。40~60代の女性に多いことから、更年期障害などによるホルモンバランスの乱れの関連も考えられています。

 

③突発性難聴
 ある日突然、片方の耳の聞こえが悪くなる病気です。内耳のウイルス感染や循環障害などが原因と考えられていますが、まだ明らかな原因は解明されていません。睡眠不足や過労、心身のストレスなども関係するといわれています。メニエール病と症状が似ていますが、メニエール病はめまいと難聴の発作が繰り返し発生するのに対し、突発性難聴は繰り返さず、めまいがない場合もあります。
 突発性難聴は、発症から1日でも早く治療することが重要です。当院では、軽度の場合にはステロイドを中心とした薬物治療、中等度の場合はステロイド治療と高気圧酸素治療の2者併用療法、重度の場合は2者併用療法に鼓室内ステロイド療法を追加併用した3者併用療法を実施しています。

突発性難聴への高気圧酸素治療の様子
耳の構造
めまいを起こさないために

 めまいには様々な種類があり、それぞれ原因や対応が異なりますが、下記の特徴がある人は回転性めまいを起こしやすいため、注意が必要です。院では、内科で診察や検査を受けることが可能です。不安があればご相談ください。

 今回ご紹介した病気以外にも、回転性めまいが発症する病気は多くあります。ぐるぐると回るような感覚があったら、早めに専門医に相談しましょう。
 また、当院では、めまい疾患のほか、中耳疾患、鼻・副鼻腔疾患、咽喉頭良性疾患、頭頸部悪性疾患、アレルギー疾患など幅広い疾患に対して、外来・入院診療を行っています。耳鼻咽喉科疾患で気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

監修:河野 敏朗 (かわの としろう)
資格 日本耳鼻咽喉科学会 指導医・専門医、補聴器相談医、騒音性難聴担当医、音声言語機能判定医、日本アレルギー学会専門医、日本医師会認定産業医