外科・消化器科

鼠径(そけい)ヘルニア・脱腸


鼠径ヘルニア・脱腸とは

鼠径ヘルニアは、一般的には「脱腸」とも言われ、足の付け根の部分(鼠径部)から腸管や腹膜の一部が脱出してくる病気です。
中年以降の男性に多く、徐々に大きくなることがあります。

鼠径(そけい)ヘルニアIMAGE


鼠径ヘルニア・脱腸の症状

症状は、立ち上がった場合や腹圧を加えた場合に足の付け根部分がふくらみ、不快感や痛みが発生します。
ふくらみが硬くなって強い痛みを生じた後、腸がはまり込み壊死する(組織が腐る)と緊急手術が必要になります。

  • 鼠径ヘルニア・脱腸の症状1
    不快感や痛みを感じる。
  • 鼠径ヘルニア・脱腸の症状2
    立った時やお腹に力を入れた時、鼠径部に柔らい腫れを感じる。
  • 鼠径ヘルニア・脱腸の症状3
    指で押さえると、通常は引っ込む。
  • 鼠径ヘルニア・脱腸の症状4
    腫れが急に硬くなり、指で押さえても引っ込まなくなる(かんとん)。

鼠径ヘルニア・脱腸の原因

なぜ足の付け根に起こるのでしょうか。
足の付け根には、おなかと外部をつなぐうすい筋膜のトンネル状の管があるため、年をとってきて筋膜に緩みが生じると、腹圧が高くなったときに、筋膜の弱い部分から袋状に腸が押しだされてふくらんできます。
乳幼児の場合は先天的なものですが、成人の場合は、筋膜の緩みが原因で腹圧のかかる仕事をしたり、便秘のためいきみが強い人に多く見られます。


鼠径ヘルニア・脱腸の3つの種類

①外そけいヘルニア
そけい靭帯の上で、外側から出てくるヘルニア。
そけいヘルニアでは一番多いヘルニアです。
②内そけいヘルニア
そけい靭帯の上で、内側から出てくるヘルニア。
③大たいヘルニア
そけい靭帯の下から出てくるヘルニアで、出産を多く経験された痩せ型の女性に多く見られます。

鼠径ヘルニア・脱腸の3つの種類


鼠径ヘルニア・脱腸の治療

治療は手術治療が中心となります。以前は弱くなった組織を糸で縫って補強する手術が主体でしたが、再発が多い、術後疼痛が強い、術後安静が必要などの問題がありました。最近はポリプロピレン製のメッシュを用いた手術が標準的となっています。ポリプロピレンは体内に留置しても異物反応が少なく、拒絶反応の心配がありません。

腹腔鏡下ヘルニア手術(TAPP法)

腹部に3箇所の小さな孔を開けて腹腔鏡でおなかの中をモニターに映しながら手術をします。
おなかの中から観察するため、ヘルニアの状態が確実に把握できます。両側ヘルニアにも左右同時に治療が可能です。

  • 腹腔鏡下ヘルニア手術1
    ①おなかの中から観察しています。
    矢印がヘルニアのくぼみです。
  • 腹腔鏡下ヘルニア手術2
    ②腹膜を切って組織を霞出します。
  • 腹腔鏡下ヘルニア手術3
    ③折りたたんだメッシュシート(ProGripTM) を挿入します。
  • 腹腔鏡下ヘルニア手術4
    ④シートを広げると自然に固定されます。
  • 腹腔鏡下ヘルニア手術5
    ⑤腹膜を縫合糸(V-LocTM) で縫い合わせます。
  • 腹腔鏡下ヘルニア手術6
    ⑥手術が完了しました。
鼠径部切開法

メッシュの入れ方には、筋膜の下にメッシュを差し込むクーゲル法やヘルニアのふくらみが出てくる穴を上からふさぐメッシュプラグ法などがあります。

クーゲル法

クーゲル法
“形状記憶”リングによって、体内に挿入後、自然に広がります。

メッシュブラグ法

メッシュブラグ法
ヘルニア部にやさしくフィットする形状のプラグと、腹壁を補強するメッシュです。